「フェアトレード」という言葉を一度は耳にしたことがありませんか。
今回は、フェアトレードが注目されている理由や、フェアトレード製品とはどのようなものなのか、分かりやすく解説します。
Contents
フェアトレードとは?
毎日の生活に必要な日用品や食料品は、できるだけ安く購入したいと思う人が多いかもしれません。
しかし、不当に安く売ろうとすることにより、生産者側が安く買いたたかれていることがあります。
特に発展途上国では、なかなか生活が豊かにならず、環境保護や教育、生産性の向上にお金を使えない状況が続いているのです。
教育を受けるお金がなければ、仕事の選択肢も広がりません。
結果的に今の低収入の仕事に依存するしかなくなります。
フェアトレードとは、発展途上国の人々が経済的に自立するために正当な価格で取引することなのです。
フェアトレードが注目される理由とは?
最近は特に注目が集まり、普及が進んでいます。
国際フェアトレードラベル機構が運営する認証を取得した農家・労働者数は2015年から2020年で約20%増えました。
SDGsの価値観が先進国の消費者を中心に広がり、多くの人が持続可能な方法で作られた製品を選んで買うようになってきていることが理由だと考えられています。
参考:国際フェアトレードラベル機構 年次レポート
国際フェアトレードとは?
フェアトレードの普及に伴い、世界共通の基準が求められるようになりました。
ここでは、国際フェアトレード基準や認証、認定されている品目などを紹介していきます。
参考:際フェアトレードラベル機構 公式HP
国際フェアトレード基準
国際フェアトレード基準とは、国際フェアトレードラベル機構が、取引の全般に共通して定めている基準のことです。
同団体では、次の3つの原則があり、この原則はどの団体にもおよそ取り入れられていると言われています。
いろいろな団体がそれぞれ独自の基準を定めていますが、ここでは最もよく知られている、国際フェアトレードラベル機構を紹介します。
経済的基準
・フェアトレードが定める最低価格を保証すること
・フェアトレード・プレミアムを支払うこと
・長期的取引を促進すること
・必要に応じて前払いを保証すること等
ここでいう最低価格とは、生産者が持続可能な生活を維持するために設定された価格です。
仕入側は、この価格を下回らずに買うことを求められます。
フェアトレードプレミアムとは、生産者個人ではなく、組合や地域の持続的発展のために用いられる奨励金で、用途は生産者の組合が民主的な方法で決めることが定められています。
社会的基準
・安全な労働環境を整えること
・民主的に運営すること
・差別を禁止すること
・児童労働・強制労働を禁止すること等
環境的基準
・農薬や薬品の使用を可能な限り削減する、または適正に使用すること
・有機農法による栽培を促進すること
・土壌や水源、生物多様性の保全に取り組むこと
・遺伝子組み換え品の育成を禁止していること
3つのフェアトレード認証ラベル
フェアトレードの製品かどうかを見分ける一番簡単な方法が、ラベルの有無です。
ここでは世界的なフェアトレードの団体のラベルを紹介します。
1 国際フェアトレード認証ラベル
国際フェアトレードラベル機構(フェアトレード・インターナショナル)が運営するラベルです。
原料の生産から、輸出入取引、加工を経て完成品として販売される全ての過程で国際フェアトレード基準が守られていることを証明しています。
2 世界フェアトレード認証ラベル(WFTO)
世界フェアトレード連盟(WFTO)が運営する認証ラベルです。
国際フェアトレード認証ラベルが製品を認証するものであるのに対して、WFTOは団体や組織の体制を審査し認証します。
製品ごとの認証では手間がかかり対応できない場合もあると言われています。
WFTO設立の背景は、フェアトレードを維持する体制が整っていることを団体として認証し、そんな団体が取り扱っている製品であることを消費者にアピールすることで、製品ごとの認証の手間を削減することにあります。
3 各企業・団体独自のフェアトレード認証ラベル
フェアトレードの基準を定めた法律はないとされています。
日本では、国際的なフェアトレードの認証マークが普及する以前から、各企業や団体が独自の基準を設け、フェアトレードに取り組んできました。
そのような歴史的な経緯から、企業や団体がそれぞれ独自に作っている認証も多いです。
企業独自の取り組みをいくつか紹介します。
・ネスレ
「ネスレ カカオプラン」を独自に設定しており、カカオのサプライヤーに対してネスレが定める調達基準を順守するように求めています。
・イオン
プライベートブランドで販売するカカオについて、独自基準を設けています。
イオンが認めた第三者認証を取得している、または生産者が抱える課題解決に向けたプロジェクトをイオンが支援していること、のいずれかを満たすこと、と定めています。
国際フェアトレード認証の製品はどんなものがある?
国際フェアトレードラベル機構によると、認証を受けた主な品目と生産量は次のとおりです。
他にもたくさんありますが、生産量の上位6種類を紹介します。
・バナナ :1,365,076トン
・コーヒー : 889,589トン
・生鮮果実 : 677,339トン
・カカオ : 609,047トン
・さとうきび : 550,647トン
・お茶 : 196,712トン
国際フェアトレードの現状
国際的なフェアトレード認証製品の市場規模は年々拡大しており、2021年は157.8億円に達したそうです。
2020年の市場規模が131.3億円ですので、一年で20億円近く拡大したことになります。
これには様々な理由がありますが、SDGsへの関心が高まるなかで、大手のデパートや百貨店などの小売各社がサステナビリティに力を入れるようになったことが大きいと言われています。
またテレワークの普及により、家庭用コーヒーの購入量が増えたことで、フェアトレードのコーヒーに注目が集まるようになったことが挙げられます。
社会的な関心、個人の生活パターンの変化、お金の使い道の移り変わりなど、様々な面でフェアトレードには追い風が吹いているのかもしれません。
フェアトレードのメリットとは?
フェアトレードは、生産者が適切な収入を得られるだけでなく、消費者や社会全体、企業にとってもメリットがあります。
生産者のメリット
生産者は適切な収入を得ることができ、それを自分たちが自立するために使うことができます。
例えば、人を雇えるレベルの収益の見通しが立てられれば、親は子供を働かせることなく学校に通わせることができるようになります。
また、機械を導入したり、新しい技術を取り入れることで生産性を高めることができます。
このように、生産者にとっては自分たちの所得を上げて生活を豊かにするためにお金を使えるようになり、貧困から抜け出す助けになるのです。
消費者のメリット
フェアトレードの認証は、農薬の削減や有機栽培など、健康面に配慮した農法を促進しています。
また環境保全に取り組むことも定められています。
消費者はフェアトレードを通して、健康面や環境面、そして生産者の労働環境に配慮した製品を買うことができるのです。
社会・環境のメリット
フェアトレード製品を選んで購入する考え方が広がり、市場規模が大きくなるほど、貧困の撲滅、環境保全、健康を害する恐れのある農薬の削減などに繋がります。
生産地全体が豊かになれば、無理に森林伐採などをして農地を拡大することも必要なくなるかもしれません。
また、生産する国と消費する国の間で対等な協力関係ができれば、戦争や紛争を減らすことに繋がる可能性があります。
フェアトレードは、社会的な問題を幅広く解決することを目指す仕組みなのです。
企業のメリット
フェアトレード製品を取り扱うことで、自社のイメージアップに繋がり、ファンの獲得に繋がることが期待できます。
もっとも、最近は商品ラインナップの中にフェアトレード製品を置くことが当然になりつつあるかもしれません。
例えば、スターバックスは毎月20日を「エシカルなコーヒーの日」として、日替わりコーヒーをフェアトレードの豆を使ったものにするなど、意識的にフェアトレードの普及を図っています。
フェアトレードのデメリット・問題点とは?
メリットの多いフェアトレードですが、普及を妨げる問題点もあります。
ここではデメリットについて紹介していきます。
製品について
同じジャンルの製品の中では、価格が割高になる傾向があります。
適正な価格で取引するのがフェアトレードのメリットであるため仕方のないことではありますが、お店としても取り扱いをためらう理由になります。
また、品質の維持も課題です。
昔ながらの方法に頼っている生産者も多く、生産量や品質が安定しないこともあります。
小売店などが安心して仕入れることができるよう、生産地伝統や文化を大切にしつつも、品質管理の徹底が求められるのです。
認証について
先ほど紹介したように、国際的に認められた基準が普及しつつありますが、まだまだ知らない人も多いのが現状です。
独自の基準を設けてフェアトレードをうたっている企業も多いため、一般消費者からすると、フェアトレードの基準がバラバラで、複雑な印象を持ってしまいます。
生産者としても、国際的な認証を取ることで自分たちの収益が改善しなければ意味がありません。
認証をとっても消費者の購入に繋がらなければ、わざわざ厳しい基準をクリアして認証を取るメリットを感じないかもしれません。
さいごに
ここまでフェアトレードの意味や、メリットやデメリットなどを解説してきました。
日常生活で使う製品を少し変えるだけで、社会課題や環境問題の根底にある生産者の貧困解消を、誰でも、できる範囲の中で手助けすることができる素敵な仕組みです。
フェアトレードについて、より多くの人が認識し、買い物をするときの選択を少しづつでも変えていくことで、社会全体が良い方向に変わっていくのです。
まずは買い物をする際に、「これはフェアトレードかな?」と意識してみてはいかがでしょうか。