最近よく目にするサステナブルとは、どのような意味の言葉なのでしょうか。
未来のことを考え、これからもずっと暮らし続けていける世の中を実現するために、世界共通の目標として取り組み始めているのが、サステナブルな社会をつくることです。
なぜサステナブルな社会を目指す必要があるのか、そして持続可能な社会のために、世界で行われている取り組みにはどんなものがあるのかをご紹介します。
Contents
そもそもサステナブルとは?
サステナブルを、「リサイクル」や「エコ」のように、地球に優しい取り組みという意味だと思ってはいませんか?
未来の環境を支えるための、企業における自然環境の維持に役立つ開発、自然環境に配慮した行動など環境に対する取り組みはもちろん、環境以外にも、従来の経済システムを見直した貧困問題の解決など、幅広く使われています。
世界が目指すサステナブルな社会は、長期的な取り組みなのです。
サステナブルの意味
サステナブルとは、直訳すると「持続可能な」という意味です。
環境問題における「持続可能」とは、地球の環境も資源も大事に守りながら、未来に続く世代も、豊かで平和な生活を続けられるような社会をつくっていくことです。
なぜサステナブルが注目されているのか?
そもそも、なぜサステナブルという考え方が必要になったのでしょうか?
それは、世界の環境破壊が進んでいることが大きく影響しています。
今、利益を追求した人間の経済活動や人口増加によって、地球にのしかかる負荷はどんどん大きくなっています。
このままでは地球環境を壊し続け、未来の世代が安心して地球で暮らすのが難しくなる可能性があるのです。
特に、以下の4つの変化はすでに深刻な問題になっていると言われています。
気候変動
環境省の統計では、世界の平均気温が1880年〜2012年の間に0.85℃上昇していることがわかります。
このまま上がり続けると2100年には、最大4.8℃上昇すると言われています。
例えば、嵐などの自然災害が増えたり、海水温度が上がることでサンゴが死んでしまったりといった生態系の変化が起きています。
もちろん私たちの健康に影響を及ぼす可能性もあり、2030年から2050年までに、気候変動が原因で、栄養不良、マラリア、下痢や熱中症で死亡する人が年間約25万人増加すると予測されているのです。
(参考:環境省、公益社団法人 日本WHO協会)
生物多様性の損失
自然資源の過剰利用や、開発などのさまざまな人間の活動が、かつてない規模に拡大していることにより、野生生物の生息地の消失と劣化が進んでいます。
地球上の動植物の絶滅のスピードは、自然な状態の約100~1000倍にも達し、日本の野生動植物の約3割にあたる3,597種が絶滅の危機に瀕しています。
(参考:環境省)
窒素の科学的循環
窒素はわたしたちの身体をつくるために重要な元素です。土や空気、水など地球上のあらゆるところに存在し、循環しています。そして、植物の成長にとっても必要不可欠な窒素は、農業用の肥料として使われることで、農産物の収穫量が爆発的に増える大革命を起こしました。
しかし、窒素肥料がたくさん使用されるようになると、それだけ環境へ流出する窒素の量も増えて、循環のバランスが崩れてしまいます。たとえば、二酸化炭素の約250倍の温室効果を持つ温室効果ガスや、オゾン層を破壊するガス、さらには、酸性雨の原因となって、環境に大きく影響を与えるガスとして放出されるようになっているのです。
(参考:日本気象協会 tenki.jp)
森林破壊
国連の報告によると、2015年以降毎年失われる天然林の面積は、約10万平方キロメートル。これは、東京都と同じくらいの大きさの森が、今も1週間ごとに失われ続けているということになります。
森林破壊の原因は、やはり人間の開発活動によるものです。
森には木材や薬の原料などがあり、世界中の人たちの暮らしに欠かせない恵みをもたらしてくれます。森林破壊が起きると、そこに住む動植物だけでなく、森林の恩恵を受けている私たちの生活も脅かされることになります。
また、森に暮らす数多くの生物は、未だ解明されていない細菌やウイルスを体内に持っています。
森林破壊によってそれらの生物たちが森の外に現れて、人や家畜と接触する機会が増えれば、また新たな感染症が広まる恐れもあるのです。
(参考:WWFジャパン)
サステナブルな社会に向けた目標
これまで紹介した通り、人間活動に伴い地球環境は悪化している状況です。
そこで世界の諸問題の改善・解決のために生まれた目標・考え方が、「SDGs」と「ESG」。
この2つは互いに影響し合い、好循環を生み出します。
どちらが欠けてもサステナブルには結びつかない、必要不可欠なものです。
ここでは、「SDGs」と「ESG」について、サステナブルとの関係を考えていきます。
サステナブルとSDGs
世界の諸問題を解決するために、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す、「SDGs(Sustainable Development Goals,持続可能な開発目標)」という国際目標が設定されています。
SDGsの「S」は、まさにサステナブルの頭文字です。
SDGsは、17の目標と169のターゲットから構成されています。
以下のSDGsの17の目標は、先進国から途上国まで、あらゆる人たちがさまざまな立場から行動を起こすための目標です。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも 経済成長も
- 産業と技術革新の基礎をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさを守ろう
- 平和と公平をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
すべての人や企業がこの目標に取り組んでいくことが、サステナブルな社会をつくることに繋がっていきます。
(参考:SDGsとは?外務省)
サステナブルとESG
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉。
持続可能な世界の実現のために、企業が取り組むべき課題という位置づけです。
世界が抱えている環境破壊などの課題は、企業が利益のみを追い求めた結果、大量生産・大量廃棄などによって引き起こされるものも多くあります。
そのため企業は、その商品やサービスの良し悪しだけではなく、社会や環境に配慮したものであるかどうかという視点で、消費者から見られるようになっています。
そしてその視点は、投資家が投資する企業を選ぶときの判断基準にもなっています。
企業がESGを重視した取り組みを行っているかどうかは、投資家が企業の将来性や価値を見るうえで大事な情報となっています。
投資家からの注目が集まることで、環境や社会にやさしいモノやサービスをつくる企業や、再生可能エネルギーの研究開発を進めたり、利用している企業などに資金が集まることになります。
これは、SDGsの目標達成に向けて動くことに繋がるため、サステナブルな社会をつくることへのプロセスとなるのです。
SDGsをゴールとするならば、ESGはそのゴールを目指すための手段と言えます。
(参考:講談社SDGs)
サステナブルに関連するワード
サステナブルに関連する言葉は、SDGsやESGだけではありません。
これからのサステナブルな社会実現のために、ひとりひとりが意識したい言葉をご紹介します。
すべて、持続可能な暮らしのための行動や取り組みに関する言葉です。
エシカル
エシカル(ethical)とは英語で、倫理的や道徳的と訳します。
ルールや法的に禁止されることは無くても、多くの人が「正しい」「良い」と思っていることを指します。
安くて自分に得があるものという基準で商品やサービスを選ぶのではなく、より環境や社会に配慮しているものを選ぶことが、エシカルな行動となります。
ひとりひとりがエシカルな商品やサービスを選ぶことで、それらに取り組む企業が増え、社会や環境に優しいものを作る活動が継続し、発展することに繋がっていくのです。
フェアトレード
フェアトレードとは、「発展途上国との貿易において、フェアなトレード(公正な取引)をすることにより、途上国の人々の生活を助け、経済的に自立できるようにする」仕組みのことです。
日本では、発展途上国で生産された日用品や食料品などが、非常に安い価格で売られていることがあります。
しかし、生産国である途上国ではその安さをつくりだすため、生産者が不当な賃金で雇われたり、児童労働などが行われたりしています。
発展途上国の生産者がつくった商品を正当な価格で購入することで、途上国の人々は貧困から脱却し、サステナブルな世界の実現を目指すことができます。
アップサイクル
アップサイクルとは、リサイクルとは異なり、本来であれば捨てられるはずの廃棄物や、不良品の形状や特徴を生かしつつ、新しいデザインやアイデアを加えることで「より良いもの」に作り変えることです。
単なる再利用とは異なり、ゴミになるはずだったものに、新たな価値を持たせ、アップグレードした商品に変えるサステナブルな取り組みです。
例えば、擦り切れたタイヤをサンダルに作り変えたり、古くなったジーンズをカバンにしたりするなどが当てはまります。
逆に、古くなったタオルを雑巾として使うような場合は、価値が下がっているものとして、「ダウンサイクル」と呼ばれます。
アップサイクルは、「より良いもの」に作り変えるというのがポイントです。
エコ
エコは生態学や自然環境を表すエコロジー(Ecology)の略称で、環境に配慮するという意味です。
一方では、「経済」を意味する「エコノミー(Economy)」のエコともいわれるようになっています。
経済活動と環境は密接に繋がっています。
生活の利便性や、人間のためだけの経済発展によって、資源の枯渇や有害物質の排出が問題になってきました。
石油や石炭などのエネルギー資源には限界があります。
太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーに切り替えていくことも、資源の確保や温暖化防止に繋がる、エコな取り組みのひとつです。
取り返しのつかないことになる前に、地球全体でエコな取り組みを行うことは、サステナブルな社会を目指すうえで欠かせません。
オーガニック
オーガニック(Organic)とは、「有機的な」を意味する言葉です。
オーガニック製品は、農薬や化学肥料、化学物質を使わずに作られたもので、太陽、土地、水などの自然の恵みだけの農業や加工を行い出来上がります。
オーガニック製品は、消費者の体に優しいだけではありません。
生産に携わる人々や作物を育てる土壌にとっても大きな影響があり、農薬や化学肥料、殺虫剤を使わないことで持続可能な生産が可能となります。
オーガニックな取り組みは、土地と生産者にとってサステナブルと言えるでしょう。
さいごに
未来も、ずっと地球で、豊かな暮らしをしていくためにひとりひとりの行動が大切になります。
サステナブルな社会の実現は、国や企業だけが取り組むべき問題ではなく、私たち個人でも考えるべき大切な問題です。
サステナブルという言葉の意味を理解し、それに向けて、ひとりひとりが「何をすべきか、何をしないようにすべきか」を選択することが、サステナブルな取り組みと言えます。
自分に出来る取り組みを考えることから始めてみましょう。